最近は比較的若い年齢層の前立腺肥大症の患者さんの受診が増えてきました。
こうした若年層の患者さんの多くは、QOL(生活の質)や性機能の温存を重視し、低侵襲治療(Minimally Invasive Surgical Therapy: MIST)を希望されます。特に、経尿道的水蒸気治療(WAVE)や経尿道的前立腺吊り上げ術(PUL)といった術式への関心が高まっています。
しかしながら、本邦の保険診療制度においては、MISTは「従来の手術が困難な合併症を有する患者」に限定されており、性機能温存を主目的とした若年の健常者に対する適応は認められていません。そのため、当院ではこうした患者さんには自由診療での対応を説明せざるを得ない状況が続いています。
MISTに使用されるデバイスは高額であり、術後の経過観察も含めて一定の費用設定が不可欠です。そのため、患者さんの経済的負担も大きく、自由診療での手術を選択される方は限られます。
こうした状況は、私にとってMIST導入の大きなハードルとなっており、本来この手術が最も適している患者さんに十分な治療を提供できないというジレンマを感じざるを得ません。近年、本邦でもMISTの適応を海外同様に見直す動きもみられますが、保険適用の拡大が一日も早く進むことを願ってやみません。
当院では現在、MIST手術そしてレーザーを中心とした前立腺手術を実施し、術後尿道留置カテーテルは翌日から翌々日に抜去とし、早期に社会復帰できる様対応しています。