放射線治療の種類
- 前立腺がんに対する放射線治療には、組織内照射である小線源治療や外照射であるX線を用いた3DCRT(3次元原体照射)やIMRT(強度変調放射線治療)があり、特殊な外照射として陽子線治療や重粒子線治療があります。
放射線治療の位置付け
- 限局がん(転移がなくがんが前立腺内にとどまるもの)では、手術治療を基本としますが、高齢者や手術リスクが高い方には、薬物療法を併用した放射外照射を選択します。
- 局所進行がんでは、手術よりも外照射が推奨される場合もあります。
- また、転移のある方でも少数転移(オリゴメッツ)であれば前立腺めがけた放射線外照射を薬物療法と合わせて行う場合があります。
- 放射線治療の適応は幅広く、重要な位置付けにあります。
SpeaceOARTM︎ とは
- 2018年6月から保険適応となりました。
- 前立腺がん放射線治療前に、直腸を前立腺から離すことで直腸の放射線吸収線量を減少させる合成吸収性材料(ポリエチレングリコールを主成分とするハイドロゲル)です。
- ポリエチレングリコールは無毒で、化粧品の材料にも用いられます。
- 2液を混合することで凝固し、約3ヶ月間スペースを保ちます。
- 挿入後、約 3ヶ月後から加水分解が開始し、約 6ヶ月で完全に体内に吸収されます。
麻酔方法
- 当院では、腰椎麻酔に笑気ガス麻酔を組み合わせて、完全に眠るわけではありませんが、全身麻酔に準じた痛みの軽微な麻酔方法をとっています。
スペーサー挿入の手順

合併症について
主な合併症(発症頻度は10%以下で、数日〜数週間程度で改善が見込めます):
- 会陰部の痛みや不快感、残便感
- 出血
- 血尿
- 排尿障害(頻尿・排尿困難)
- 便秘
- 感染
- アレルギー反応
重大な合併症(極めて稀れ):
- 直腸への穿刺針の貫通やハイドロゲルの流入
- 血管内へのハイドロゲルの流入
- 直腸粘膜の潰瘍・壊死
- その他、不測の事態
金マーカー留置について
- 前立腺内部にコイル状の金マーカーを留置する処置です。
- 前立腺直腸間スペーサー挿入と同時に行います。
- 金マーカーは放射線治療前の位置合わせの目印となり、より正確な照射が可能となります。
- 照射範囲のずれが生じることで、治療効果が減弱するリスクや放射線による合併症が増加するリスクがあり、金マーカーはこれらのリスクを抑制する効果が期待されます。
- 金マーカーは、体内に永久的に留置されますが、人体への悪影響はないとされていますのでご安心ください。