前立腺針生検について
前立腺がんの確定診断として行います
前立腺がんの確定診断に行うのが、前立腺針生検です。前立腺針生検は、がんの有無だけでなく、がんの悪性度や広がりを調べるために必要な検査です。当院の針生検は麻酔下に行うため痛みのない前立腺針生検を行っています。年間100件以上の生検を、経験豊富な泌尿器科専門医が担当しています。そのため日帰りでの前立腺針生検法を確立しました。
前立腺針生検の適応
前立腺針生検を行うかどうかの適応判断は、PSA検査の結果を参考に決められます。PSA検査とは前立腺特異抗原検査のことであり、PSA値が高い場合前立腺がんが一般的に疑われるというような指標となっています。下記がPSA検査の数値による対応表です。
PSA (ng/mL) | がんの検出率 | がんの進行度 |
---|---|---|
2 – 3.9 | 10-20% | (±) |
4 – 10 | 20-50% | (+) |
10以上 | 50%以上 | (++) |
前立腺がんの診断では、PSAの異常値があってもがんが実はないことがあります。PSA値は前立腺の炎症や肥大でも上昇します。PSAの結果だけを基に前立腺針生検を行うと、がんがない人に不要な検査を行うことになってしまいます。そのため、かとう腎・泌尿器科クリニックでは、まずPSA値が高い人には前立腺MRIをすすめています。近年の前立腺MRIは高い精度で、がんの有無や大きさ、位置を予測することができます。さらに、PSA値とMRIの画像所見だけでなく、直腸診、家族歴、前立腺の体積、排尿状態、尿の検査結果など、さまざまな要因を考慮して、前立腺針生検の適応を決定しています。
これにより、がんの有無をより正確に判断し、不要な前立腺針生検を減らしています。生検は少なからず身体への負担をかける治療ですので、とにかく実施すればよいという検査ではないです。また、当院では経験豊富な泌尿器科専門医が直腸診を行い、硬結がある場合はがんの可能性がありますので、PSA値に関係なく前立腺針生検を検討しています。前立腺MRIでがんの可能性が高い場合も、前立腺針生検を強くすすめています。さらに、PSAが10ng/dl以上の場合は、がんの可能性が高いため、MRIの所見にかかわらず前立腺針生検をすすめることがあります。
前立腺針生検のメリット
精神的に負担をかけない検査が可能
入院検査は高齢のかたにとって精神的な負担を感じながら過ごす場合があります。日帰りで検査であれば、検査後慣れた自宅でゆっくり過ごすことが可能です。スケジュールへの影響も最小限に抑えることができます。
入院と比較し費用負担を軽減
入院費が不要なため検査の費用負担が軽減されます。血液をサラサラにする抗血小板剤・抗凝固剤服用中の患者さんには状態によって入院施設のある病院での検査もおすすめしております。
前立腺針生検による合併症
前立腺針生検は、複数回針を前立腺に刺す検査です。そのため、軽度の出血などの合併症が比較的頻繁に発生しますが、通常は2週間ほどで自然に改善します。重篤な合併症はまれですが、前立腺炎や膀胱炎、尿閉などが報告されています。また、頭痛などの合併症が発生することもあります。しかし、当院では経験豊富な医師・スタッフの元で検査を行い、当院で対応できない合併症は中核病院に紹介し対応いたしますのでご安心ください。
前立腺肥大症の症状をセルフチェック
国際前立腺症状スコア(IPSS)
項目 | スコア | 分類 |
---|---|---|
排尿開始の遅延感 | 0-5 | 0: なし, 1: まれに, 2: 時々, 3: しばしば, 4: ほとんどいつも, 5: 常に |
排尿後の残尿感 | 0-5 | 0: なし, 1: まれに, 2: 時々, 3: しばしば, 4: ほとんどいつも, 5: 常に |
排尿中断の回数 | 0-5 | 0: なし, 1: まれに, 2: 時々, 3: しばしば, 4: ほとんどいつも, 5: 常に |
排尿の緊迫感 | 0-5 | 0: なし, 1: まれに, 2: 時々, 3: しばしば, 4: ほとんどいつも, 5: 常に |
尿の勢いが弱い | 0-5 | 0: なし, 1: まれに, 2: 時々, 3: しばしば, 4: ほとんどいつも, 5: 常に |
排尿回数の増加 | 0-5 | 0: なし, 1: まれに, 2: 時々, 3: しばしば, 4: ほとんどいつも, 5: 常に |
夜間排尿の回数 | 0-5 | 0: なし, 1: 1回, 2: 2回, 3: 3回, 4: 4回, 5: 5回以上 |
合計スコア | 0-7: 軽度, 8-19: 中等度, 20-35: 重度 |
QOL(生活の質)
QOL項目 | スコア | 分類 |
---|---|---|
排尿状態による生活の質 | 0-6 | 0: 非常に満足, 1: 満足, 2: ほぼ満足, 3: どちらでもない, 4: ほぼ不満, 5: 不満, 6: 非常に不満 |
当院の前立腺針生検の麻酔対応
専門の麻酔科医が丁寧に対応します
痛みの少ない生検検査が可能です
当院では検査時の痛みを感じにくいように、全身の状態を考慮し、麻酔科医による全身麻酔、腰椎麻酔、場合によっては局所麻酔を行い痛みの少ない検査を提供します。
前立腺がんについて
がんの中で診断数第1位の疾患です
男性のみに存在する前立腺という、精液に混ざる前立腺液を分泌し、膀胱の出口に干渉して排尿や射精をコントロールする役割を持つ臓器に発症するがんです。前立腺がんは50歳以上の男性によく見られる病気で、アメリカでは男性のがんによる死亡原因の第2位を占めています。日本でも高齢化と西洋化した生活様式により、急増しています。2019年に診断された人数としては94,748例。2020年には死亡者数は12,759例となっており、日本においては現在がんの中で第1位の患者数にまでなっています。
初期の自覚症状は前立腺肥大症による排尿障害と似ていますが、前立腺がんは外腺(辺縁域)から発生しやすく、初期にはほとんど自覚症状がありません。そのため、50歳を過ぎたら定期的に人間ドッグや健康診断で血液検査(PSA検査)を受けることが重要です。がんが進行すると、骨やリンパ節に転移し、重大な病気となります。
検査の仕組み
経会陰式前立腺針生検を行っています
前立腺針生検では、まず肛門から超音波を出す機械を挿入し、前立腺を観察しながら経会陰的に針を刺して前立腺組織を12ヶ所以上採取し、採取した細胞を顕微鏡で観察して、がん細胞の有無を調査します。経会陰式前立腺針生検は経直腸式生検と比較し、感染の危険性が低い方法です。そのため当院では経会陰式前立腺針生検を行っています。
前立腺針生検の結果、前立腺がんではなかった場合は、定期的なPSA検査で経過を観察します。前立腺がんと診断された場合は、他の臓器への転移がないかを調べるため、CT、骨シンチグラフィによりがんの進行度を確認します。PSA検査だけでは断定することができていなかった前立腺がんか否かを確定できるのが前立腺針生検の大きな意義です。
検査の流れ
- 1 検査前
- 外来にて、血液検査、心電図、レントゲンなどの事前検査を実施します。
- 2 検査前日
- 前日の21時以降は食事をお控えください。
- 3 検査当日
- 検査前に経口補水液をとっていただき、指定の時間に来院してください。
- 4 検査開始
- 麻酔を受けていただきながら検査を行います。標準的には12ヶ所組織を採取します。組織をとる時間は6~7分で、麻酔を含めて15分~20分の検査です。術後は、処置室にてお休みいただき排尿ができ次第お帰りいただきます。最後に血尿の程度を確認します。
- 5 検査翌日
- クリニックに来院していただき、血尿の状況を確認するために尿検査を行います。病理結果は7~14日で判明します。前立腺がんは複数の治療方法があり、患者さんご本人との十分なご相談のもと、治療方法を決定していきます。
よくあるご質問
日帰り前立腺針生検とは何ですか?
A
日帰り前立腺針生検は、入院せずに外来で行う前立腺の組織検査です。検査後は慣れた自宅で安静に過ごすことができます。
検査の準備として必要なことは何ですか?
A
検査前には、血液検査、心電図、レントゲンなどの事前検査を行います。また、前日には、指定された時間以降は飲食を控える必要があります。
検査当日はどのような流れですか?
A
検査当日は、指定された時間に来院し、麻酔を受けた後に前立腺針生検を行います。検査自体は約20分程度で終了し、その後しばらく安静にしてから帰宅できます。
検査中や検査後に痛みはありますか?
A
検査中は局所麻酔を使用するため、痛みはほとんど感じません。検査後に軽い不快感や出血がある場合がありますが、通常は数日で改善します。
検査後に注意すべきことはありますか?
A
検査後は激しい運動や飲酒を避け、安静に過ごすことが推奨されます。血尿や精液中の血液が見られることがありますが、通常は一時的なものです。
検査結果はどのくらいでわかりますか?
A
検査結果は通常、10~14日後に判明します。結果説明の際には、可能であればご家族と一緒に来院してください。
合併症のリスクはありますか?
A
前立腺針生検には少量の出血や感染症のリスクがありますが、重篤な合併症はまれです。万が一、発熱や強い痛みがある場合は、速やかに当院に連絡してください。
前立腺針生検の適応となる基準は何ですか?
A
PSA値が高い場合やMRI、直腸診で異常が見られる場合などに前立腺針生検が推奨されます。複数の要因を総合的に判断して適応を決定します。
生検後に再検査が必要になることはありますか?
A
初回の生検で前立腺がんが見つからなかった場合でも、引き続き経過観察やPSAの再検査を行い、必要に応じて再度生検を行うことがあります。
検査前に何か特別な準備は必要ですか?
A
検査前には、特に薬の服用や食事制限が指示されます。血液をさらさらにする薬を服用している場合は、事前に医師に相談してください。
検査後の生活で特に注意することはありますか?
A
検査後は、激しい運動や重労働を避け、数日間は安静に過ごすことが推奨されます。飲酒や性行為も控えるようにしてください。
検査後の通院は必要ですか?
A
はい、検査翌日に再度来院し、出血の程度を確認するために尿検査を行います。また、検査結果の説明や今後の治療方針を決定するための通院も必要です。
検査後の出血はどのくらい続きますか?
A
検査後の出血は通常、数日から2週間程度で改善します。血尿や精液中の血液も同様です。もし出血が続く場合や、量が多い場合は医師に相談してください。
日帰り前立腺針生検の費用はどれくらいですか?
A
前立腺針生検の費用は、保険の適用範囲や施設によって異なります。具体的な費用については、事前に当院に問い合わせて確認することをおすすめします。
前立腺針生検を受ける前に避けるべき薬はありますか?
A
血液をさらさらにする薬(抗凝固薬や抗血小板薬)を服用している場合、安全のために検査前に一時的に中止する場合があります。必ず医師に相談してください。
生検後に起こり得る感染症の予防方法はありますか?
A
検査後には抗生物質を処方されることが一般的です。指示通りに服用し、体調に変化があればすぐに医師に連絡してください。
前立腺針生検で検出される他の疾患はありますか?
A
前立腺針生検では、前立腺がん以外にも前立腺炎や前立腺肥大症などの異常が発見されることがあります。これにより、適切な治療方針が立てられます。
検査前に避けるべき食べ物や飲み物はありますか?
A
検査前日の夜から検査当日までの間、特に飲酒は避けるべきです。また、指定された時間以降は絶食が必要です。
前立腺針生検の結果、治療が必要な場合の選択肢は?
A
前立腺がんと診断された場合、手術、放射線治療、ホルモン療法など、状態に応じたさまざまな治療法があります。医師と十分に相談して適切な治療法を決定します。手術、放射線治療が必要な患者さんには実績のある病院を紹介させていただきます。
費用
料金表
1割負担 | 3割負担 | |
---|---|---|
全身麻酔下針生検 | 18,000円 | 32,000円 |
腰椎麻酔下針生検 | 10,000円 | 15,000円 |
※表示金額は全て税込みです。
お支払い方法
お支払い方法は、
下記に対応しております。
高額療養費制度について
高額療養費制度は、医療費が高額になった場合に、その一部を健康保険がカバーすることで、患者さんの負担を軽減する制度です。具体的には、自己負担限度額を超えた分の医療費が返還される仕組みとなっており、重篤な病気や手術を受ける際の経済的な支援を受けることができます。ただし、限度額認定証を提出する必要があります。所得に応じて、1ヵ月間の支払金額が調整されます。
高額療養費制度を受ける流れ
医療機関での支払い:まずは通常通り、医療機関で医療費を支払います。
申請書類の提出:自己負担限度額を超えた医療費について、必要な申請書類を健康保険組合に提出します。健康保険高額療養費支給申請書という書類を提出します。
払い戻し:申請が認められれば、超過分の医療費が払い戻されます。